血管外科

            地域血管外科施設として

                                          名誉院長 稲田 洋
 

 

血管外科という診療科をご存知の方は少ないと思います。それは、従来血管の病気といいますと一般の方にはなじみが薄く、それを専門的に扱う診療科も日本では少なかったからだと思います。そのような病気にかかった場合、患者さんがどこで診療を受ければよいのか迷われるのではないでしょうか。
通常、一つの系統疾患には、例えば、消化器疾患に対して消化器内科と消化器外科があるように内科と外科があり、各々の領域を担当しておりますが、血管疾患に関しては、従来より手術が必要な病気が多いせいもあり、血管内科というものはなく、血管外科が全てを担当し、薬物治療と手術を行っております。ただ、血管外科は、病院内では非常に特殊な部門とみなされ、一般にもあまり知られていなかったのですが、近年、いろいろな領域でその必要性が認識され、注目を集めるようになりました。今回、血管外科とは何をしているのか、また、対象となる血管疾患にはどんなものがあるのかご紹介致します

 

図1 腹部大動脈高位閉塞症
(大動脈造影)

 

まず、最先端の領域では、最近話題の臓器移植手術において、移植される臓器の血管と提供を受ける患者様の血管をつなぎ血流をうまく再開させることが非常に重要で、その際に適切正確な血管外科の技術が要求されます。臓器移植手術では血管外科が大きな役割を占めます。

 

図2a 腹部大動脈瘤
(大動脈造影像)

 

図2b 腹部大動脈瘤(CT像)

 次に、近年生活様式の欧米化、人口の高齢化に伴い動脈硬化症が日本でも増加しつつあり、それによるいろいろな病気が顕著となってきました。動脈硬化症では動脈が閉塞するか拡張するか、またその病変がどこに発生するかで多彩な病態を示します。例えば、脳の動脈に閉塞が起これば脳梗塞で、心臓では狭心症や心筋梗塞となります。腹部大動脈でも閉塞を起こしたり(図1)、拡張をきたし大動脈瘤(図2a・b)を形成します。前者の腹部大動脈高位閉塞症では、腹部内臓や下肢の血行障害を起こし、自覚症状としては歩行障害、下肢のしびれ、だるさ、痛みといった症状がでます。後者の腹部大動脈瘤では、自覚症状はあまりなく、最終的には破裂をきたします。血管外科では、前者には人工血管によるバイパス手術、後者には瘤切除・人工血管置換術を行います。
 

 

 

図3 閉塞性動脈硬化症
(動脈造影像)

 また、下肢の動脈にはよく閉塞をきたし(図3)、閉塞性動脈硬化症といわれ下肢の血行障害により歩行障害、しびれ、痛みを呈し、進行すると足の先から紫色や黒色に変化し腐って壊死に陥ります。これにはバイパス手術やバルーン付きカテーテルによる血管拡張術が行われます。残念ながら壊死に陥った場合には、下肢の切断が必要になります。
動脈は急に閉塞する事があり、動脈塞栓症か血栓症が原因となりますが、いずれも強い痛みを伴い、急いで血栓や塞栓摘除術を行い血流を再開させなくてはなりません。血流再開が遅れると閉塞した部位の壊死をきたします。 

 

 

図4 下肢静脈瘤

  一方、静脈の病気では、下肢の静脈が膨らむ下肢静脈瘤(図4)がよく女性に見られます。軽症であれば何もしなくてよいのですが、重症では静脈瘤に対する硬化療法や静脈結紮術が必要です。下肢の静脈が急に閉塞し下肢がはれる静脈血栓症では早急に静脈内血栓摘除術が必要です。
また、腎臓の病気で透析が必要な患者様には、人工腎臓に血液を導くため動脈と静脈の間でシャントを作成する事や、またシャントの閉塞などのトラブルにも血管外科が対応しております。

 

 

 

血管外科の対象となる血管疾患には、意外と広範囲にわたり、緊急手術が必要な疾患が多く迅速な対応が求められます。

さとう記念病院においても、緊急手術への対応を含めて、血管疾患の診断・治療に当たる体制を整え、地域の血管外科施設として、その診療に当たりたいと思います。